条件付き確率の話 私には2人の子どもがいて…

ある人が言った。

私には2人の子どもがいます。そのうちの少なくとも一人は女の子です。

この人に女の子が2人いる確率はどれだけか?

ただし、1人の子どもをランダムに連れて来たら、男の子である確率も女の子である確率も1/2 である。

こう尋ねられたら、かなりの人が 1/2 と答えるのではないだろうか。なぜそう思うのか訊いてみよう。

「だって、残り1人は男か女かどっちかじゃないですか。確率は当然半々ということで、 1/2 ですよ」

これは、実はまちがっていて確率は 1/2 にはならないのだが、その前にこの人の推論の仕方が正しいかどうかを考えてみよう。この人は、2つの可能性がありうるのだから、「要は2つに1つだろう?」と言っているわけだ。ここで大先生を登場させて、少し問答を続けよう。

「いやいや、可能性が2つで半々だったら、明日は雨が降るか降らないかの2つの可能性しかないからといって、雨の確率は 1/2 だって言えるか?そういう理屈はまちがっているんだよ」

「もちろんもちろん!その件はそうでしょ。しかし、男の子か女の子かという可能性だったら、どう考えたって半々じゃないですか。一体どこがおかしいんですか?」

可能性を比べる

上の問答では、2つの可能性のどちらも同じくらい実現しやすければ、確率は 1/2 ずつになるし、偏っていればそうではなくなる、そのことでは意見が一致している。回答者は「男の子か女の子の比較だから1/2ずつ」と考えているのだが、出題者はそうではないようだ。大先生の言い分を聞いてみよう。

「ここでは1人と1人じゃなくて、きょうだいを考えているのだから、2人組を単位として考えるといいんじゃないかな」

ハイ、話はそういうこと。ここで考えるべきは、世の中のすべての2人きょうだい(兄弟と書くと男子にかぎられるので、ひらがなにしてます)を並べて、そこからランダムに1組を取り出すというやり方を取らなければいけない。すべての2人きょうだいの集まりを簡単に示すとこんな感じだ。


とうぜん、世の中には莫大な数の2人きょうだいがいるわけだが、その中で(男,男) (男女) (女男) (女女) の組は同数あると考えていいので、比率で考えればこの図の通りでよい。

この4通りの中で、「少なくとも1人が女の子」という組み合わせは、上の図で青い線を施した3組に限られる。したがって、この中で女の子が2人いる組み合わせは 1/3 ということになる。

さて、上で出てきたのは「少なくとも1人が女の子であるような2人きょうだい」という集合だ。これを「すべてのきょうだいの中の2人きょうだい」という集合の中に組み込まれていると考える。つまり、ある集合になんらかの条件を付けて絞り込んだ部分集合を考えるわけだ。

こういう形で定義される確率のことを条件付き確率といい、複雑な問題を切り分ける強力な道具になっていて、この先でいろいろ活用することになる。