NMRパイプテクターの批判記事を公開します

株式会社日本システム企画という企業があります。水道管に外側から「NMRパイプテクター」と名付けられた装置を取り付けると,管の中の赤錆を還元して黒錆に変えることで配管設備を更新することなく数十年保たせることができるという触れ込みで,全国の団地,マンションや事業所に売り込んでいる会社です。価格は400万円ほどであり,配管設備の更新に通常要する数千万円もの出費に比べたら破格の安さです。

 しかもこの装置,周囲の電磁波を取り込んでマイクロウェーブ(電子レンジで食品を加熱している電波もマイクロウェーブ)を出し続け,それが鉄管内の水に照射されて,水和電子を出し,それによって還元が起こるので,無電源,メンテナンスフリーだというのです。その「原理」については,日本システム企画のサイトhttp://www.jspkk.co.jp/product/product.html?fbclid=IwAR3sJMhfdAzmwJt_3aakqh1s0ZkgxcQALPLABjrTHx20kuTytH_kCgZKNVkdで,ありったけの科学用語を放り込んだ説明が公開されています。

 もうこれだけで眼の色を変えて,「そんなすごいものならうちでも付けよう!」となるマンションの理事長や事業所の所長がいるかもしれないですね。しかし,上の説明を多少の科学知識を持つ人が見れば,この装置は話にならないインチキ商品でしかありません。

どんなに科学が進歩しても,宇宙を支配しているエネルギー保存の法則をやぶる装置は作れません。断言しておきます。NMRパイプテクターなる装置はナンセンスなガラクタです。

 私はこの装置のいかにも科学を装ったインチキぶりに対して,すでに2018年3月に正面から批判する文書を作成して,SNSなどを通じてネットに公開しました。

https://drive.google.com/file/d/1-3bCmHI9OkfJVpsQdUsu3AynpHOntzar/view?usp=sharing

 その影響は多少あったようで,一般の住民の方や日本システム企画を知る方などからの情報が寄せられています。しかし,最近でもパイプテクターの強引な売り込みが行われているマンションがあるということで,被害はまだまだ起きているようです。


「理科の探検」誌の記事を公開します

先日,SAMA企画発行の雑誌「理科の探検」2019年4月号で「ニセ科学を斬る!ファイナル」という特集が組まれ,そこに「謎水装置」NMRパイプテクターに翻弄される人々」という記事を寄稿しました。昨年の文書のあとさらに集まった情報や,ツイッターアカウント「謎水」さんが公開しているマンガも許諾をえて使わせていただき,さらにはこの商品にタイアップしてあやしげな医療装置の「研究」を行っている大学の研究者への批判も含めて,一本の記事にしたものです。

 この記事についても,せっかくなので世に訴えるために使いたいと編集長の左巻健男さんに伝えたところ,快諾を得ました。リンクを貼りましたので,自由にダウンロードしてお使いください。印刷したものを配布しても結構です。
http://konamih.sakura.ne.jp/Documents/PipeTec_Rikatan2019.pdf


悪貨は良貨を駆逐する

 NMRパイプテクターについて,私はずっと継続して何の効果もない製品であること,それなのにきわめて疑わしい内容の宣伝によって堂々と販売されていることを批判してきています。なぜそうするのかというと,現状の消費者保護の枠からは,法人・団体向けのこの種の商法に規制を掛けることができないという,非常に困った状況があり,一方で毎年おそらく10億円をかなり超える売上が発生していると思われるからです。

 一つのまがい物が売れれば,まっとうに作られた製品がそのために市場から排除されます。ちゃんとしたメーカー,設置業者による建物の配管設備の更新工事がそのために阻害されるわけです。価格差を考えると,数十億円もの仕事が奪われているかも知れません。その逸失利益によって,良質の仕事をしている企業が市場から押し出されてしまうのです。

 さらに問題なことがあります。よい仕事をしようという善意で頑張っている日本中の業者も,他の企業が悪質な手抜きで儲けを得ていることを横目で見たらどう思うでしょうか?ばかばかしくなり,自分も人を騙して儲けてしまえということになりかねません。優れた技術で勝負せずに,消費者をだまして儲けようとなったら,資本主義は健全な姿からはるかに遠ざかるでしょう。
 かつて科学的根拠のないマイナスイオンがブームになったときに,大メーカーでさえも商機を逃すなとばかりに追随しました。最近では水素水ブームでも同じことが起きました。そんなことをしている間に,日本の企業は技術革新に遅れていき,アジアの他の国の後塵を拝する始末です。

 良貨が悪貨に駆逐されてしまう状況を放っておいたら,この社会は経済的にも,道義的にも沈没してしまうでしょう。ニセ物ではなく,事実と道理が世の中を動かしていってこそ,未来もあるわけです。