アルカリ性は体によい,酸性は悪い……こんな迷信が,いまだに続いている。 ペーハー(pH 水素イオン濃度)は7が中性,7より高くなるとアルカリ性, 7より小さくなると酸性である。キリンビバレッジの「朝のきれいな水」の pH は8.5~9.3のアルカリイオン水と表示してある。アルカリ性であれば, からだによいかのような文句が書いてある。(三好「アルカリ健康法の迷信 --- 朝のきれいな水」,p.64)
もうひとつのアルカリ迷信は「アルカリ食品は健康によい」だ。 (同上, p.65)上の記述は正しい。巷に溢れているアルカリイオン水だの, 酸性食品は体によくないだという俗信はさっさと一掃して,悪徳業者 (大メーカーからチンピラ詐欺師までごまんといるのだ)に儲けさせない ようにしなければいけない。
動物性脂肪が,心臓病や脳卒中,さらには大腸がんなどの大きな原因であることは, いまや常識である。(中略)
さらに,骨折や骨粗鬆症の引き金にもなる。血液が酸性にかたよる食事をしていると, pH(ペーハー)バランスのため骨からカルシウムが溶出するからだ。
「同じ肉でも,油で加熱調理すると,酸形成能力はグンと高まる。 (中略)油を加熱調理に使うことで,脂肪が増えるだけでなく, 血液がより酸性になり,骨をもろくする」(丸元淑生著「生命の鎖」飛鳥新社) (船瀬「環境も健康も破壊するファストフード --- ハンバーガー」p.33)
なんと,堂々とアルカリ食品,酸性食品の俗信を説いているのだ。しかも怪しげな
本をその典拠にして。
そういった批判が相手にとって痛くもかゆくもないのは,あたりまえのことである。
まあ,この船瀬という人の記事はどうにもひどいものなのだが,
編集者はこの食い違いに無関心だったのだろうか?
まして著者たち3人に編集者が加わって,巻末で座談会をやったりしているのだ。
お互いに記事のチェックもしてないのであろう。
こんないい加減な本を買ってはいけない。
ところで,ケイ酸質の土壌と短い河川と豊富な降水量で特徴づけられる
日本の地下水や流水は溶存する成分が非常に少ない軟水で,
大気から溶け込む二酸化炭素のためわずかに酸性である。
一方,ヨーロッパなど大陸の水はカルシウムなどを多く含む
硬水であり,とくにミネラルウォーターとして売られている水は,
ナトリウムやカルシウムの炭酸水素塩を少量含んでいて,弱アルカリ性である。
本物のエビアン水などを飲んでみると,日本人にはあまりおいしいものではないし,
輸入されてもほとんど売れないようだ。
しかし,こういう日本人の水に対する軟水指向と日本の水質が,
カルシウムの摂取が不足気味になる大きな原因を作っていることは,
われわれは自覚しておいたほうがよいだろう。